Chapter2 -3-#01 - TopGear
08 « 1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.» 10

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2

category: スポンサー広告

Posted on --/--/-- --. --:--  edit  |  tb: --  cm: -- 

Chapter2 -3-#01 

【#01】








――それは春の夜の出来事だった。


週末。一週間の終わり。日常からの開放感も相まって、駅へと続くアーケード街は、
夜桜見物で浮かれ騒ぐ人々で、大いに賑わっていた。


そんな通りの一角で、ひと際目を引く、人だかり。
中心では一人の男がギターを爪弾き、歌っていた。


『ねっ、すごく素敵な歌でしょ!』

『うんうん』

観客達は、彼の歌に合わせて手拍子で盛り上げる。

『お、いい歌だねぇ~』

ふらりと通りかかった酔っ払いも、足を止めてその歌に耳を澄ませる。


(ありがてぇ。今日もこんな俺の歌に、足を止めて聞いてくれる人がいる・・・)


彼の名は“東久留米 乃”――。
毎週金曜の夜、ここが彼のステージとなっていた。



演奏が終わると、観客から、惜しみない拍手が送られる。

その拍手に彼が一礼し、次の曲を演奏しようと、呼吸を整える。
直後。なぜか人の群れが乱れ、波立つようにざわつき出した。


(・・・なんだ?)

東久留米が顔を上げると、人垣を掻き分け、強引にこちらへ向かってくる人影が見えた。


(やれやれ、また酔っ払いか?)


酔っ払い。それにしては、どこか様子がおかしい。
背後から割り込まれた客達が、ムッとして、振り返ると
次の瞬間、文句を吐き出そうと開いた口は、ハッと息を呑み
不快に満ちた眼差しが、憧憬へと変わっていく。
そして、その理由はすぐに明白となる。


『こんばんは』


東久留米の目の前に現れた来訪者は、美しい女性だった。

端整な顔立ちに、日本人離れしたスタイルは、まるでファッションモデルのようで、
彼女の纏う黒いレザージャケットは、ロックテイストでありながら、肩に掛かる艶やかな
ブロンドの髪を引き立て、気品すらも与えていた。


『あんた、何なんだい? 演奏するから大人しく聴いてなよ』

彼女は青く澄んだ瞳で、応える。

『素敵ね、あなたの演奏』

『そらどうも』

『ねぇ、私と組まない?』

『いきなり勧誘かい? すまんが、俺は群れたりすんの好きじゃねぇんだ』

『それは残念。せっかく腕のある人を見つけたと思ったのに』

『なぁに、俺くらいの奴ぁいくらでもいる。他を当たりな』


東久留米は冷たいくらいにきっぱりと断った。が、驚いたことに、
彼女は諦めて立ち去るどころか、次の曲を待っているようで、微動だにしない。


(おいおい、調子狂うなぁ・・・)

酔っ払った中年サラリーマンにくだを巻かれ、絡まれるのは、毎度のことで
そのあしらいに、すっかり慣れている東久留米ではあったが、さすがに女性に・・・
それも金髪の美女に絡まれるのは、彼の人生でも初めてのケースである。


『ごめん、今日は早いけど、これで終いっす』

対処に困った東久留米は、おもむろにギターを仕舞い始めた。

『え~っ』『もう終わり?』

観客から不満の声が上がる。
しかし、ケースに収められたギターを見て、ようやく諦めたのか
客達は渋々解散し、夜の街へと流れるように消えていくのだった。





関連記事
スポンサーサイト
web拍手 by FC2

category: story 1

thread: 創作モノ

janre: その他

Posted on 2012/08/23 Thu. 20:00  edit  |  tb: --  cm: 0  

コメント

コメントの投稿

Secret

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。