Chapter2 -2-#03 - TopGear
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Chapter2 -2-#03 

【#03】






そんな重い空気を割るように、バタバタと騒々しい足音が近づいてきた。

『やべっ誰か来る!』

千葉と奏は慌てて携帯灰皿へタバコを突っ込むと、そ知らぬ顔で景色を眺めた。


『あ! 千葉さん、こんなとこに居たんすか!』


足音の主に、奏は拍子抜けする。


『はぁ~。なんだ、河津かよ』

『あ、奏の姐さん! ちぃーっす』

河津の馴れ馴れしい態度に、奏は不機嫌そうに舌打ちし、そっぽを向いた。

『ったく! お前らと同類扱いすんじゃねぇよ!』

『あらあら』


千葉は二人のやり取りを笑い、一息ついて河津に用件を尋ねた。


『それで? アタシになにか用かしら?』

『ぐへへ、千葉さん!』

河津がニタニタと下卑た笑いを浮かべ、千葉に耳打ちをする。

『さっき俺、調子こいてる奴らから大金巻き上げてきたんで、遊びに行きやしょうぜ!!』

『よくやったわ河津!』

『ゲーセン、パチスロ、カラオケ・・・あ! もちろん千葉さんの美容費もありますからね!!』

『それで買いに行くわよ! 楽器ちゃん!!』

『へい! それじゃあ早速、楽器屋へ・・・って、へ?』

『そうねぇ。まずはギターちゃんがいいかしら』

『ちょちょっ、待ってください。なんでまた楽器なんすか!?』


思わず話を遮り、説明を求める河津に、千葉は恍惚の表情で語り始めた。


『誠二ボーイとの一件以来、安嬉ボーヤのリズムが、アタシを抱きしめて離さないの!! ああん』


千葉が自分の肩を抱いて、うねうねとヘビの如く、身をよじる。
その不気味な光景に、河津はすがるような眼差しを奏へ向けた。


『えーっと・・・?』


しかし目が合った瞬間に、奏は観念したように肩をすくめてみせる。
なるほど。すでに末期症状らしく、何を言っても無駄であることを河津は悟るのだった。


『――その時アタシは、音楽の無限の可能性に気づいたの!!』

『へ、へぇ・・・それはすごい』

河津は抑揚のない相槌を打つ。

『アタシ達も、あの二人のように、アタシ達のリズムを、人々の身体に刻み付けるわよ!!』

『アタシ・・・たち?』

『そう! アタシとアナタでバンドを始めるのよ!!』

『ひゃいぃぃい!!?』

河津は驚きのあまり、素っ頓狂な声を上げた。

『いやいやいやいや、どーしたんすか千葉さん!!? ボクサーになるんでしょ?』

『あん! 顔を傷つけたくないから辞めるわ!!』

『いまさら、そんな・・・』

『そうだわ! バンド名は “キューティー☆メルヘン” がいいわ!! 決定!!』

『キュ、え? ちょっ、マジ、え、ぇぇえええ!?』

『それじゃあカナちゃん、またねん☆』


千葉は奏にウィンクすると、問答無用で河津を引きずり、尻を振り振り去って行った。
そんな男達の背中を、苦笑いで見送って、


『やれやれ、やっと静かになった・・・』


奏は静寂にひとつ、ため息を落とした。



遠くに聴こえる彼らの演奏は、出会ったばかりの手探りの中から、
光を見つけたように、輝きを増していく。



手元にタバコはなかったが、奏はしばらくの間、その音に耳を傾け、
ひとり静かに、聴き入っていた。






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category: story 1

thread: 創作モノ

janre: その他

Posted on 2012/08/22 Wed. 20:00  edit  |  tb: --  cm: 0  

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