Chapter2 -3- - TopGear
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Chapter2 -3- 

【#04】






ギターを構えるナイキは、威圧的なオーラを纏い、その姿を一回り大きく見せていた。

『お前、俺の事、口だけだと思ってんだろ?』

『違うの? だってオレ、あんたの実力なんて知らないし』

『はは、そうだったなぁ』

ナイキの実力――それは彼のギターや、誠二への大言から、大体の察しはついた。
しかしそれは、予想であり、実際の演奏を聴いてみないことには正確な判断はできない。

それに・・・と、ミツがナイキを睨む。
その声音には、非難と怒りが滲んでいた。

『あんただって、オレの歌聴いてないだろ?』

『くくっ、お前の歌なんて聴くまでも無いんだよ』


明らかな侮辱――。
ミツは込み上げる怒りを抑えられなかった。

『じゃあ、オレじゃなくてもいいだろ! あんたはただ、歌える人間が欲しかっただけだろ!
だったら他で探せよ! あんな汚いマネまでして・・・っ』

声を荒げるミツに、ナイキは呆れたように、ああ、と鼻で笑う。

『お前はカナが目を掛けたバンドに居たからな。他で探すより手っ取り早いだろ?』

『それだけの理由?』

いや、とナイキは嘲笑混じりに返し、ミツの方へと歩み寄る。
突然距離を詰められ、反射的に後ろに引こうとする足を
ミツはなんとかその場に留めた。
ナイキの顔が近づく――

『お前の声はよく通るし、声量もある・・・』

ナイキの右の拳が、ミツのみぞおちに触れる。

『そしてそのバカデカイ声は、この腹の筋肉と呼吸、発声がしっかりしているからだ。違うか?』

ミツは驚き、ナイキを見返した。

『ボーカルとしての素質は充分だ』


ミツはナイキに、大きな違和感を抱いた。

ミツは今まで、ナイキがボーカルにこだわりや興味が無く、ただ歌える人間を
探していたのだと思っていた。
しかしナイキは、この短時間で、確実にミツのボーカルとしての資質を見抜いている。

そして、もうひとつ――”奏が目を掛けたバンド”だという理由――。
底辺だの、腐れバンドだの、ボロクソに扱き下ろしていたが、内心では
奏を保証人として、その実力を認め、信頼していたのではないのだろうか。


もしかして――


ミツが違和感に対する答えを掴みかけたその時、
ナイキのギターが一声を上げた。



【#05】



その音に、ミツはハッと顔を向ける。
聞き覚えのあるメロディー

(さっきのデモ――いや、違う)

同じ曲だが、全く別ものだった。

ミツが息を飲んだその瞬間、
スネアの張りのある音が響いた。

いつの間にか、グッチもドラムセットに囲まれ軽快にリズムを刻んでいる。

激しい曲調――にも関わらず、二人の呼吸は乱れる事なく、お互いの音を
生かすように縒り合わされていく。

ナイキのプレイは、特に技巧を誇示したり、派手なパフォーマンスを見せる
わけではなかったが、ミツはその旋律に、身体の芯が震えるような衝撃をおぼえた。


ナイキの表現力が桁違いなのだ。
明らかにその実力は、誠二を上回っている。

その現実はミツにとって、受け入れ難い程に苦しく、悔しいものだった。

誠二を見下し、痛めつけたこの男を許せるはずもない。


そう、頭では解っていても、鼓動は高鳴り
二人が奏でるこのサウンドに、自分の歌をのせたい――
そんな本能的な欲求に駆られてしまう自分がいる・・・。


ミツは歌いたくなる衝動を必死に抑え、歯を食いしばり、目を閉じた。


ミツの葛藤をよそに、二人のセッションは、更に熱を帯びる。
演奏も終盤にさしかかったところで、ナイキのギターが突然止まった。
それにつられ、ドラムの音も止む。
その直後、静寂の中にナイキの声が小さく聞こえた。

『ああ、俺だ・・・』

何かあったのか――状況がわからず、ミツは目を開けた。

『ああ、開いてるぜ』

ナイキは電話の相手と話をしていた。
演奏はこの着信に邪魔されたようだ。
ミツはホッとした。反面、少し惜しい気もした。

『ああ、わかった』

ナイキは電話を切ると、ニヤついた顔をミツに向けた。

『残念だったなぁ。今日の練習は終わりだ』

『え・・・?』

『客だ』





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Posted on 2012/04/27 Fri. 01:00  edit  |  tb: --  cm: 0  

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