Chapter2 -3- - TopGear
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Chapter2 -3- 

【#01】







ミツはてっきり怒られるものだと思っていた。

『なにそれ』

どういう意味かと、ミツは怪訝な顔でナイキを見返した。
ライブに備え、それなりに自信があって聴かせたものであろうそれをミツは一、二発、殴られる事も覚悟の
上で「ヘタクソ」と吐き捨てた――。にも関わらず、実際のナイキの反応は意外にも好意的なものだった。


『俺も、お前と同意見だ』


デモとは言え、曲自体の完成度も高く、音源としてそれなりの体裁は整えてある。
爆音でなければ耳を塞ぐほど下手でも無い。むしろ個々のレベルは、それなりに高い。

しかし、自己主張の激しい音を、ただ寄せ集めただけのもの――調和というものを欠いているそれは、ミツに
とって、ただの雑音に過ぎない。ナイキに対する反発も当然あった。しかしそういう感情を抜きにして、ミツ
は率直にこれはヘタだと思い、そう言った。


『でもあれって、あんたたちの曲じゃないの?』

『ああ、だが俺が演奏したわけじゃない』

『ウチは入れ替わりはげしいからな~』

携帯でメールでもしているのだろうか。グッチが背を向けたまま、二人の会話に独り言のように口を挟む。

『まぁ、実力はさて置き、歌詞さえ聞き取れりゃいいだろ』

ミツは嫌な予感がした。
どうして気づかなかったのか、あって然るべきものが手元にない。

もしかして――

『譜面ないの?』

『なくした』



【#02】



『なくした? 歌詞も無いの!?』

薄く笑うナイキに、ミツは呆れた。これではメンバーが定着しないのも当然だと思えた。

『ククッ別に、耳コピすりゃいいし、問題無いだろ』

やけにあっさり言ってくれる。
しかし、それなら幾分納得出来る。もしかすると調和を取らない楽器は、
それぞれのパートを聞き取り易くするため、敢えてそうしていたのかもしれない。
だが、ボーカルのパートにおいては話がかわってくる。

『ちょっと待って、さっきのじゃ、何言ってるか全然聞き取れなかったんだけど』

『あ~! さてはお前、英語がわかんなかったんだろ~?』

ミツの訴えに、グッチが勢い良く食いついてきた。

『え? 英語・・・?』

『ははっ! い~ングリッシュだよ。い~ングリッシュ!』

どこに・・・と、口のなかで呟くミツの耳には、あの曲から英語も日本語も聞き取れなかった。
滑舌の悪さに加え、独特のイントネーションで符割りされては、正確に日本語を聞き取れない。
ましてや英語なんて・・・むしろそっちが日本語じゃないのかと空耳してしまう程に、発音がクソ過ぎた。

愕然とするミツに、グッチは追い打ちを掛ける。

『はは~ん、小学校じゃ英語はまだ習ってなかったか~?』

『うるさい! 黙れハゲ!』

『ぎゃはははは! 声でけぇ!』

グッチはハゲと言われ、むしろ喜んでいるようだった。
ミツは腹を抱えて笑うグッチを無視して、ナイキに向き直った。

『あんたは歌詞くらい覚えてるんじゃないの!?』

『あ~、昔の事で忘れたなぁ』

『なにそれ』

『下手な歌に興味ねぇんだよ』

そう言ってナイキは、玉座の傍らで鈍く輝くギターへ手を伸ばした。



【#03】



ヴィンテージスタイルのそのギターは、実際に長年弾き込まれてきたのであろうネックやボディに
キズが有り、塗装が処々磨り減っている。しかし、経年変化による音の変化もほとんど感じさせず、
今だ現役で使われているのは、ナイキの手入れが行き届いている証拠なのだろう――。


『なぁ』

ふいに グッチの声が足下から聞こえた。
いつの間にか笑いの収まったグッチが、床に横たわり右手に頭を預け、ナイキを見上げていた。

『吐死夜なら、歌詞覚えてんじゃないか?』

チューニングを始めたナイキの手が、一瞬止まった。

『・・・かもな』

『ひゃははっ! やっぱ亡威忌は吐死夜にお守りしてもらわねぇと、ダメダメじゃ~ん』

瞬間ナイキの目に殺気が宿る。

『殺すぞ。ハゲ』

『あらやだこわい』

『トシヤ・・・ベースの人? いつ来るの?』

さあな。と軽く流し、ナイキはソファーから重そうに腰を上げた。

『じゃあオレ歌えないけど。いいの?』

『お前は適当に歌詞付けて歌ってりゃいいんだよ』

ナイキは端から興味がないのか、ミツに視線を移すことなくストラップを肩に掛け、アンプにシールド(ケーブル)
を繋ぎ始めた。


『なにそれ・・・』

この男はどこまで――ミツは憤る。
自分達の曲、バンド、メンバーに対して愛着というものが一切感じられない。

そんな人間が他人のバンドに敬意などはらうはずもない。
だから誠二に対し、なんの躊躇もなく、あれほど情け容赦ない振る舞いができたのか――。


『なんで、お前みたいなのが音楽やってんだよ・・・』

『悪いかよ』

光を宿さないナイキの暗い瞳が、ミツを冷たく見据える。




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Posted on 2012/04/27 Fri. 00:00  edit  |  tb: --  cm: 0  

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