Chapter1 -6- - TopGear
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Chapter1 -6- 

【#01】




四人の視線が注がれる中、扉がゆっくりと開かれた。


『あの~せいじくん居ますかぁ?』

夏花が扉からそろそろと顔を覗かせる。


『なつ・・・』

『あ、せいじくん居た!
あのね、雨降ってきたから、傘持ってきたの』

『あ、あぁ・・・わざわざ悪いな』

『どうしたの? みんな・・・』

一斉に拍子抜けした顔を向けられ
夏花は少し居心地の悪さを感じた。

それを察した安嬉が、すかさず話題をすり替える。

『ちょうど良かった~。
なっちゃん、誠ちゃん具合が悪いみたいでさ~。
今日はもう練習も終わったし、一緒に帰ってあげて?』

『え? せいじくん大丈夫!?』

『あ! そうだ! 途中で誠ちゃんが倒れるといけないし
ハルピンも一緒に帰ってあげてよ! ね!』

『え、オレも?』

いつもの調子でヘラヘラと話す安嬉の変り身の速さに
瀬能は怒りを忘れ呆気にとられている。

安嬉は誠二達三人を強引にせき立てると
スタジオの外へとまとめて送り出した。

『じゃ! みんなまた明日。学校でね~』

安嬉は明るく手を振った。




【#02】



『何かあったの?』

軒先で傘を開きながら、夏花がストレートな質問を投げ掛けてくる。


『別に』

瀬能は夏花に悟られない様に
その一言を素っ気なく返すのが精一杯だった。

夏花はふ~んと、瀬能を見やり頷くと
今度は誠二の顔を心配そうに覗き込んだ。

『せいじくん、本当に大丈夫? 顔色悪いよ?』


誠二は応えず俯いたまま歩き出した。

『あ、ちょっと! せいじくん傘!』

夏花は雨が嫌いな誠二に傘を差し掛けようと、慌てて腕を伸ばした。

しかし惜しくも届かない。


誠二の胸の内には、やりきれなさや自己嫌悪
歯痒さが激しく渦巻いていた。

今すぐにでもミツを連れ戻しに行きたい
だけど、ミツがどこへ連れて行かれたのかもわからない

誠二は無力感に押しつぶされ、今にも崩れ落ちそうだった。


そんな誠二に、瀬能が傘を差し掛けてきた。


誠二は瀬能を一瞥すると、再び俯いた。その頬を一筋の滴が伝う。

瀬能もまた誠二と同じ悔しさを抱えている。
無言で肩を並べて歩く誠二と瀬能の後ろを、夏花が静かについて行く。

今、二人が自棄を起こさないでいられるのは、夏花のおかげだった。


安嬉が三人をまとめて帰らせたのはこの為なのだろうか・・・

瀬能はあの時、何事もなかったかの様に「また明日」
と、笑って言える安嬉の神経を疑った。

だが夏花を心配させたくないという思いは皆同じだったはずで
また、あの状況でこうした機転を利かせることが出来たのは
あの場では間違いなく、安嬉だけだった。




【#03】



三人は誠二の家に到着した。

『瀬能くん、送ってくれてありがとう』

誠二に代わり、礼を言う夏花に『おう』と一言だけ返し
瀬能は今だ押し黙ったままの誠二に視線を移した。

瀬能は今にも潰れそうな誠二を励ましたかったが
夏花の手前、躊躇われた。

『じゃあ、ふたりとも、また明日ね』

『おう』

簡単な挨拶を交わし、夏花と瀬能は
それぞれに、家路へ向けて歩き出した。

しかし、瀬能の歩みは徐々に速度を落とし遂には止まる。

瀬能は意を決した様に振り返った。


『誠二!』

不意に呼ばれ、誠二は顔を上げた。

数秒ほどお互い顔を見合わていると
瀬能が目線を逸らし、口を開いた。

『ま、また明日な』


照れくさそうに小走りで駆けて行く瀬能の背中を、誠二は黙って見送った。

それは口先だけの慰めでもなく
不器用な瀬能なりの、精一杯の励ましだった。
それが分かった誠二は小さく頷く。


『ああ・・・』


(そうだな


また明日になれば
いつもの様にミツはスタジオに来るかもしれない

そしていつもの調子で
瀬能を怒らせて安嬉を困らせて
茶菓子食って・・・

そんな、なんでもない日常が
明日も明後日も、その先も、続いてるんだ、きっと・・・)


しかし、身体に受けたダメージが、その痛みが
容赦無く誠二を現実へと引き戻す。





――こうして、一人の男の登場によって
結成間もない“Top Gear”の日常は瓦解する――



その日、関東地方は
誠二の嫌いな梅雨を迎えた。





【一章:終】
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category: story 2

Posted on 2012/03/29 Thu. 00:00  edit  |  tb: --  cm: 0  

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