Chapter2 -1- - TopGear
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Chapter2 -1- 

【#01】



――安嬉達がスタジオに到着したその頃。

誠二と別れたミツは、タクシーの後部座席の車窓から
流れる街並みをぼんやりと眺めていた。



(誠二・・・大丈夫かな)

誠二は最後までナイキの脚にしがみ付き
必死で引き留めようとしていた。

それをナイキは踏み付けにし、腹に蹴りを入れた。

ミツも誠二を庇おうとしたが一歩遅く
誠二はそのまま気を失ってしまった――

そんな誠二を置いて行かなくてはならない・・・
ミツはそれが、本当に悔しかった。

しかし、あのままスタジオに居れば
きっと安嬉や瀬能も、ただでは済まない。

これ以上の犠牲者を出さない為にも
ミツは身を切る思いで、ナイキに付き従う他なかった。


『降りるぞ』

隣りから声がかかり、ナイキに続き、タクシーを降りたミツの前には
見慣れない街並みが広がっていた。

不安を覚え、見上げたミツの瞳に、今にも泣きだしそうな空が映る。


『ちゃんとついて来いよ』

そう言ってナイキは人ごみを器用に縫って、サクサクと歩いていく。

ミツはそのペースに、ついて行くのがやっとだった。


賑やかな大通りから外れ、ナイキは寂れた裏通りへと入る。

そこは昼間でも人通りが少なく、曇り空と相まって
より一層陰湿な雰囲気を醸し出していた。


『そこだ』

ナイキが指差した先にあったのは、古い雑居ビルだった。




【#02】



ビル自体は5,6階建てのありふれた外観だが
そのほとんどに、看板が掛かっていなかった。

ナイキはそのビルの扉を開け、中へと入っていく
薄暗い廊下の奥で、半畳ほどのエレベーターが口を開けた。

ミツは警戒しながらもナイキの後に従う。


目的の階は三階。
再びエレベーターが口を開き、吐き出されたその先は
うす暗く、湿った空気が、重く肌に纏わりついてくる。

ミツは喉を締め付けられるような、息苦しさを覚えた。


『曰く付きってやつだ。ククク』


ナイキが含んだ笑いを見せながら、入り口の扉を開けると
正面に置かれた、空の受付カウンターがミツを出迎えた。

カウンターの右横には小さなロビー
そのロビーを正面に、右手を見ると
細長い廊下に、いくつもの扉が並んでいた。

ナイキはそれを、指さしで簡単に説明した。

いくつかの個室は物置きで、トイレはカウンターの裏手。
そしてなぜか、シャワールームまで完備されている。


どうやらナイキは、ここを塒(ねぐら)にしているらしい。



【#03】



最後に、ナイキがメインフロアと呼ぶ扉を開いた。

その瞬間、二人は音の壁にぶつかった。
真っ暗な室内に、大音響で迫り来る強烈なスクリーモ。

ミツは咄嗟に耳を塞いだ。


ナイキは壁に手を伸ばし、室内の電気をつけた。

そして無言のまま、ツカツカと部屋の奥まで進むと
壁際に置かれたオーディオのつまみを捻り、ボリュームを最小に絞った。

騒音を撒き散らす巨大スピーカーが大人しくなった所で
ようやく、ミツはため息と共に耳から手を離した。


そもそも、無人の部屋でなぜ、あんな大音響で
音楽がかかっていたのか・・・


もしや曰くつき――? いや、違う。


ナイキの足元にはプラグが虚しく転がっている。
どうやら、そのオーディオから抜け落ちた物らしい。

そのコードの先には、ヘッドフォンを装着したまま
床に大の字になり、爆睡する男がいた。

ナイキが腹立たしげに、その男の脇腹を蹴り上げると
「ぐえっ」と啼いた男が、うんうん呻きながら目を覚ました。



これがここの流儀なのだろうか・・・
ミツは思わず、顔をしかめた。



【#04】



『入れよ』


ナイキに促され、ミツは室内へ足を踏み入れた。

壁をぶち抜いたメインフロアは、縦に長く、意外に広い。
照明が一部屋分しか点いてない為、フロアの奥は、薄暗くてよく見えないが
全体で、およそ三十畳はあるだろうか。


ここは元々音楽スタジオだったらしく防音設備や音響設備が、十分に整っていた。

入口横に設けられた簡易ステージには、ドラムセットにキーボード、大型スピーカーに
マイクスタンド、アンプにエフェクターと、すぐにでもライブが出来る程度に機材が
揃っていた。


そのステージの正面、フロアの中央には傍らにギターを侍らせた真っ赤な
アンティークソファーが、さながら玉座の様に鎮座している。

どうやらナイキの特等席らしい。

ソファーの前には木製のローテーブルが置かれ、その上には灰皿替わりの
空き瓶や空き缶が、飲み口に吸い殻を突っ込まれたまま乱雑に並んでいる。

テーブルの周囲には、雑誌やCDが今にも崩れそうな、危ういバランスで積まれている。


ナイキはソファーにどっかりと身体を預けると、そのままテーブルに足を投げ出した。

ナイキに蹴やられた酒の空き瓶や空き缶が床に転がる。
中には飲みかけのものもあったのだろう。こぼれた中身が床にシミを作る。

そんな事は気にも留めず、ナイキはタバコに火をつけ、一服すると
寝起きの男に声を掛けた。




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Posted on 2012/04/25 Wed. 00:00  edit  |  tb: --  cm: 0  

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